TRPGオンラインセッション2-2 プチセッションリプレイ
現在、Naoten主催で開催中のTRPGオンラインセッション。
今から一ヶ月ほど前、
今回のオンラインセッションから新規で参加してくださった方のキャラクター作成を行い、
その後、本編に向けてTRPGの遊び方を軽く学んでもらうためにプチオンラインセッションを行いました。
その内容を当ブログでお馴染みのやま提督がリプレイとして書き起こしてくれたので、
当記事において公開したいと思います。
それではどうぞ、ご観覧あれ。
注:文中にはセッション中に表示した画像等をNaotenが勝手に差し入れています。
(以下、追記へ。)
今から一ヶ月ほど前、
今回のオンラインセッションから新規で参加してくださった方のキャラクター作成を行い、
その後、本編に向けてTRPGの遊び方を軽く学んでもらうためにプチオンラインセッションを行いました。
その内容を当ブログでお馴染みのやま提督がリプレイとして書き起こしてくれたので、
当記事において公開したいと思います。
それではどうぞ、ご観覧あれ。
注:文中にはセッション中に表示した画像等をNaotenが勝手に差し入れています。
(以下、追記へ。)
TRPG2-2-0 赤い石
俺の名前は東郷毅。職業は自衛官だと言っておこう。
ん?お前の自己紹介はどうでもいいだと?まぁそうだろうな。
そんなわけで今俺は相棒の向坂と一緒にとある洋館へやってきている。
東郷「向坂さんよぉ~なんで俺たちがこんなところにいるんだよ。」
向坂「しょうがない。なにせ、クライアントからこの洋館にまつわる怪異について解明しろと言われてるんだから。」
向坂「それよりお前は戦える人間なんだから先頭に立ってすすむべきだろ。」
東郷「へいへい。わっかりましたよ~っと」
言葉を交わしながら洋館の中へ。
そもそも、なぜ俺達がこの洋館の調査へと赴いてるかと言うと
この洋館は取り壊しが決まっていたのだが取り壊そうとすると声がしたり
作業員が体調不良を訴えたりと何かと怪異が起こると言うのだ。

その怪異を解明するのが今回商会に依頼された仕事だ。
ん?商会ってなんだ?だと?そうか。それの説明もまだだったな。商会とは様々な人間が集まる裏組織だ。俺の様な自衛官から相棒である向坂のような素性不明の人間まで色々な人間が集まり、金によってクライアントに雇われる為に所属し、クライアントからの仕事を俺たちに斡旋する組織それが商会って奴だ。まぁ俺の場合は自衛官としての生活とは別に新しい刺激に触れたくて商会に属してるんだがな。
まぁそんな話は横に置いておいて、今俺たちは怪異を解明する為に洋館へと足を踏み入れた。洋館の表玄関を潜ると長い廊下が奥の暗がりへと続いている。

東郷「うわぁ・・以下にもって感じだな。なんかこう・・有り得ない物が出そうってか・・・」
向坂「そんな事はどうでもいい。早く行くぞ。」
東郷「へいへい。」
俺たちはゆっくりと廊下を進む。
向坂「ちょっと待て。」
東郷「ん?なんだ?」
向坂「奥から何か音がする。これは・・・水・・か?」
東郷「水?確かにそう言われればそんな音がしているな。」
奥に何かあるのだろうか?暗がりの奥から微かに水の流れる音がする。俺たちは音のする方へ誘われるように進んだ。
暫く進むと向かって左側に二つの扉があるのに気付いた。
東郷「部屋・・か。怪異の元凶を調べるなら入るべきなんだろうが・・」
東郷「どうも嫌な予感しかしねぇんだよなぁ・・・」
俺はその怪しさ満点の部屋に踏み込むことを躊躇った。いや、本心が踏み込むべきでないと告げているのかもしれない。俺の本心が明らかにこれ以上行くなと告げる中、相棒は・・・と、言うと
向坂「おい、東郷。止まってないで行くぞ。お前先頭で中に入れ。」
と、向かって左側の奥にある扉へと入ろうとしていた。
東郷「っち・・向坂、お前って奴はも少し考えて・・・ってなんで俺先頭なんだよ!!!」
向坂「いや、だって俺戦闘力低いし、てか、現職の自衛官がビクビクしすぎなんだよ。」
東郷「へいへい。わっかりましたよぉ~入れば良いんだろ入れば。」
と、向坂に言われるままに俺が先頭となり部屋へ入った。

入った部屋は窓からの明かりを除いて明かりも無く、もう随分と使われて居ないことが伺えた。
東郷「え~と、ソファーに本棚に机・・か・・・」
東郷「書斎か何かだったのか?」
向坂「まぁ見た感じではそうだろうな。」
入った部屋はソファー、机、本棚があり、書斎あるいはリビングであった事が解る。
東郷「とりあえず調べてみますかね。」
向坂「俺は本棚を調べる。東郷。お前はソファーと机のまわりを調べてくれ。」
東郷「あいよ。」
俺は短く返事をしてソファーを確認する。
東郷「ん~・・埃を被ったままだし、この分だと随分使われてねぇんだろうな。」
ソファーを一通り調べては見たが、特に何も見つからなかった。次は机を調べる事にする。
東郷「机の上は~ってなんもないよな。と・・なるとこういう場合に怪しいのは机の下なんだよな。」
独り言を言いながら机の下をのぞきこむ。
東郷「お、なんだありゃ?」
机の下に古びた紙が見える。俺はその紙を手に取った。
材質から察するに古びた羊皮紙らしい事が解った。

東郷「さて、何が書いてあるのかな?っと」
東郷「え~何々・・・見つからない様に奪¥○*△・・・良くわからねぇなこれじゃ」
羊皮紙には一言「見つからない様に奪¥○*△」と書き記されていた。奪うと書きたかったのだろうか?字が掠れていて読める部分しか解らない。
東郷「さてと・・お~い。そっちはなんか見つかったのか?」
おもむろに本棚を調べていた向坂に声を掛ける。
向坂「なんだ、そっちは調べ終わったのか?」
東郷「もう調べ終わってるよ。そっちは成果あったのか?」
向坂「いや、全然だ。本も本で黒魔術だなんだと胡散臭い物ばかりだな。」
東郷「うへぇ・・やっぱり帰ろうぜ。ここ絶対なんか隠してるって」

向坂「それじゃクライアントの依頼は果たせないだろうが。」
向坂「それより、お前は何か見つかったのか?」
東郷「ん?俺か?俺は机の下を調べたら紙が見つかったぜ。」
そういって向坂へ羊皮紙を手渡す。
向坂「何々、見つからない様に奪¥○*△・・ってなんだこれ」
東郷「知るかんなもん。掠れて読めねえんだよ。」
向坂「まぁいい。これは俺が預かるから次の部屋へ行くぞ。ほら、先に行け。」
東郷「へいへい。また俺が先頭かよ。」
そして俺たち二人は廊下へ戻りもう一つの部屋へと調査に入った。
今度の部屋は流し台とテーブルがある。大分使われていないのは先ほどの部屋と同じだが今度は台所だった所の様だ。

東郷「台所だったとこか。ここは調査する必要もないな。」
向坂「いや、待て。」
東郷「はぁ?なで、待たなくちゃっておい!!」
俺が答える前に向坂は割れた皿が散乱している一角へ歩み寄っていた。
東郷「あの~・・向坂さーん・・何割れた皿と睨めっこしてるんですか~・・・」
そう、向坂は割れた皿を一心に見つめて居るのだ。こいつは変態か?とも思えたが不意に皿を見つめていた向坂が口を開いた。
向坂「割れた皿の破片を持っていくか。」
東郷「はぁ!?おま、んなもん持ってって何になるんだよ!」
向坂「いや、護身用にはなるだろう。」
東郷「護身用って・・もっとマシな物を探せって・・・おっ・・・」
向坂「ん?どうした?」
東郷「あれって包丁じゃないか?」
向坂「そうだな。」
割れた皿の散乱する先に包丁が落ちていた。
東郷「とりあえず、割れた皿と包丁も持っておけ。皿よりは護身用になるだろ。」
向坂「お前にしては気の利く提案だな。」
東郷「お前にしてはってのが気に食わねぇが・・まぁいいや。」
東郷「で、ほかに調べる事はあるか?」
向坂「ここはもうないな。廊下に戻るぞ。」
東郷「あいよ。」
俺たちは台所を後にして再び廊下へと戻ってきた。
東郷「で、次はどうするよ。」
向坂「こうなったら次は決まってるだろ。奥へ進むんだよ。」
東郷「だよな。俺は行きたく無いんだが・・」
向坂「おい。ぶつぶつ言ってないで行くぞ。」
東郷「わぁったよもう!!」
俺たちは最初に水の音がすると言っていた廊下の最奥。暗がりの中へ歩き出した。暫く歩くと廊下の突き当たりへと辿り着いた。
東郷「水の音がするって言っても行き止まりじゃねえか。」
向坂「その様だな。」
東郷「その様だなって・・・」
向坂の淡白な反応に若干困りつつ辺りを見渡すと同じく向かって左側に用具入れの様なものがあるのに気が付いた。
東郷「用具入れ・・・か?これ?」
向坂「その様だな。」
東郷「調べてみるか?」
向坂「一応調べるか。」
そういって向坂が用具入れの様なものを開けようと手を掛けた瞬間不意に一陣の風が吹いた。それもただの風ではない。背筋が凍るような冷たい風だ。

東郷「なんか・・今すごく寒気がしたぞ。」
向坂「なぁ・・東郷?質問があるんだが・・・」
東郷「お、質問とは珍しいな。こういう状況出なければ真面目に答えられるんだが・・・なんだ?」
向坂「これは風が吹いた方向を向くべきなのか?」
東郷「そうだな・・・本来は向くべきじゃないけど玄関があっちだしな。どうする。せーので振り向くか?」
向坂「そうだな。それが良い。」
東郷「じゃあ行くぞ・・!」
東郷・向坂「せーの!!」
二人は振り向いた。
東郷・向坂「!!!?」
二人は言葉が出なかった。なぜならそこには異様な光景が広がっていたからだ。
東郷「お、おい・・てか、あ、あの・・向坂さん?なんかナイフが宙に漂ってらっしゃるんですが・・・」

向坂「そ、そ・・その様だな。というかあれはこちらを確りと狙っているぞ。」
東郷「お、落ち着いてるように見えるが動揺してるの見え見えだぞ。」
向坂「動揺するに決まってるだろ!あんなもんこの世には存在しないっての!!」
向坂「東郷、お前とりあえず撃て。銃持ってんだろ。」
東郷「わぁったよ!!ちっ・・面倒だな・・・っ」
向坂に言われた通り腰のホルスターから護身用に携帯してるグロック17を取り出しざまに構えナイフ目がけ発砲する。
しかし、浮遊している物に命中させるのは難しく、外れる。
向坂「外すなよ!!」
東郷「俺だって人間だ、外さない方がおかしいんだっての!!」
俺が狙いを外した事に口論しているうちにナイフが向坂目がけて飛んできた!
東郷「おい、向坂!!危ないぞ!!」
向坂「そんなのわかってるっての!!」
向坂咄嗟の回避行動。向坂を狙ったナイフは虚しく空をきり、壁に深く突き刺さった。ナイフを構えていた何かが壁からナイフを必死に抜こうとしているのかナイフが激しく揺れる。
向坂「おい、東郷!今なら撃てるだろ。撃て!!」
東郷「言われなくても解ってらい!!」
俺は再び銃を構える発砲。銃弾はナイフの柄に命中しその衝撃で刃が折れた。刃が折れた瞬間ナイフの柄は金属の腐るような腐臭を漂わせ消滅した。
東郷「ふぅ・・何が一体どうなってやがんだ・・」
向坂「そんなの知ったことか。だが、この身に起こった状況を解決する為にもう一度しなきゃならないことがある。」
東郷「そうだな。あの胡散臭い本がぎっしりの本棚で胡散臭い本を調べなおそう。」
俺たちはその場を後にして再び本棚があった書斎かリビングであろうと推測される部屋に移った。
向坂「さて、ここで調べる事は一つだ。」
東郷「ああ、わかってる。本を調べるんだよな。」
向坂「そうだ。わかってるならさっさとやるぞ」
東郷「おうよ。」
俺たちは先ほど胡散臭いと断言していた本をこの異常な事態から逃れる為に真剣に調べた。その結果先ほど見逃していたいくつかの本を発見した。それは頻繁に赤い石と書かれている本と人の生死に関して執拗に追及している本だ。
東郷「生と死と赤い石が頻繁に書かれてる本・・やっぱり胡散臭せぇな。」
向坂「まぁでも、何かの役に立ちそうだな。とりあえず持っていくか。」
そういって向坂は手に入れた本を懐にしまった。
向坂「さて、これで調べてないのはあの触ろうとした瞬間に何か危ないものが襲ってきた用具入れだけだな。」
東郷「そうだな。行くか?」
向坂「行くか?じゃなくて行くしかないだろ。多分謎はあの用具入れが全部知ってるぞ。」
東郷「だよな。」
こうして俺たちは一度後にした用具入れの前に再び立っていた。
向坂「開けるぞ?」
東郷「おう。俺は周りを警戒してるから開けるなら早くしてくれ。」
向坂は用具入れの扉を開けた。そこには掃除用具が入っていたが何か違和感があった。
向坂「普通の用具入れの様だが何か引っ掛かるものがある」
東郷「その引っ掛かる者ってなんだ?」
向坂「解らんが何か・・・あっ!」
東郷「ん?どうした」
向坂「なにか引っ掛かると思ったらこの用具入れ・・用具入れにしては大きすぎないか?」
東郷「そう言われればそうだな・・・奥に何かありそうか?」
向坂「いや、奥には何もないが・・あ、壁があるぞ。」
東郷「壁?用具入れの中にか?」
向坂「そうだ。用具入れの中に土壁があるぞ。」

東郷「壊せそうか?」
向坂「今調べてみる。」
東郷「調べるってどうやってだ?」
向坂「先ほど手に入れた皿の破片を刺し込むんだよ。壊せるところがあれば皿の破片が刺さるはずだ。」
そういうと向坂は皿の破片を壁に差し込み始めた。程なくして向坂が何かを見つけたらしい。俺に声を掛けてきた。」
向坂「あ、あったぞ。ここの奥に中にある。それにここなら人力でも壁が壊せそうだ。」
東郷「あ、でも壊す物とか無いぞ。」
向坂「壊すものが無いなら手足を使えば良いだろ。」
東郷「まぁそうなるよな。んじゃいっちょやりますか。だが、お前さんも手伝ってくれよ。」
向坂「わかっている。」
二人は用具入れの奥の壁を出て掘り、足で蹴り穴をあけそして穴を広げていく。程なくして壁にあけた穴の向こう側から階段が現れた。

東郷「とうとう・・謎の正体が掴めそうか?」
向坂「多分この下に何かがある事は間違いないだろうな。」
東郷「しかも、最初に聞こえた水の音もこの下からか。」
向坂「やっぱり原因はこの下・・だな。」
東郷「行くしかない・・・な・・」
向坂「ちょっと待て、まずは深さを計る。」
向坂は石を階段の下へと投げ込んだ。あまり深くないところからカツーンと言う石がぶつかる音がした。
向坂「これは・・深さにして地下へ一回分くらいという所か。」
東郷「どうすんだ?探しにいくか?」
向坂「行くしかないだろ。」
東郷「だよな。じゃあ行きますかね。」
やはり俺が先頭になり、銃を構え警戒しながら階段を下りていく。階段を下りるとそこには地下室が広がっていた。
東郷「おお、隠してあるのに意味があるのかと思ったが随分と御大層な部屋だな。」
向坂「確かにな・・・ん?部屋の中央に何かあるな。」
東郷「確かにここからじゃ見えないが・・・明かりあるか?」
向坂「ちょうどライターがあるぞ。タバコは吸うからな。」
東郷「そうか。じゃあ灯してくれるか?」
向坂「わかった。」
向坂が持っていたライターで灯りを灯す。ぼうっと部屋が明るくなると共に部屋の中央にある物が浮かび上がった。

東郷「あれは・・祭壇か?」
部屋の中央には石で造られたベッドの様な祭壇の様な何かが鎮座している。その上には・・・
向坂「あれは・・人か?」
鎮座した物の上には人の様なものが横たわっている。
東郷「どうする近づいてみるか?」
向坂「そうだな。近づいてみるか。」
俺たちはヘッドか祭壇か、良くわからない物へと近づいた。近づくと側の壁に窪みがありそこに飾られている物が見えた。
東郷「おい、あれって・・・」
俺が指を指すその先。そこには人の首が置かれていた。
向坂「首・・だな。だが、生首ではない。ミイラかあれは」
そう。壁の窪みに飾られていたものそれは首だった。しかしそれは生首ではなくミイラかしたものだったが、ミイラになってもなお生気を保っているようにも見えた。
東郷「なんか・・ミイラだとしても生々しくないかあれ・・」
向坂「そうか?そうは見えんが・・・」
向坂「それより気になるのは遺体の方だな。」
東郷「遺体がそこまで気になるのか?別に何ともないと思うが・・」
向坂「遺体に近づいて動かれても困るからな。足の裏を撃ってみろ。」
東郷「おいおい・・ご遺体に失礼だとか考えないのかよ・・」
向坂「こんな状況でんなこと言ってられるか。早く撃て」
東郷「わぁったよ。やれば良いんだろ。」
俺は遺体の足の裏へと照準を合わせて一発撃ちこむ。足の裏に弾丸を撃ち込まれた遺体は肉に銃弾が突き刺さる鈍い音と共に少し衝撃で浮き上がったが、特に動きを見せずに沈黙した。
向坂「本当に死んでるんだな。」
東郷「そら、そうでしょうよ。」
向坂「これで周りをじっくり調べられる訳だ。」
東郷「そうだと良いけどな。」
遺体であることを確認すると再び俺を先頭に祭壇へと近づき始めた。祭壇へと近寄るとそこには遺体が横たわっていたが、その遺体にある物が欠けている事に俺は気が付いた。
東郷「おい、こいつ・・首が無いぞ。」
向坂「確かに無いな。となると、あのミイラはこいつの首か。」
東郷「首の無い死体と首だけのミイラか。多分怪異の元凶はこいつで決まりなんだろうな。」
向坂「そうかもしれないが、部屋のほかのところも調べてみるぞ。」
東郷「わかった。」
俺たちは見回すようにしながら祭壇の周りをぐるりと一周した。
祭壇の周りを一周した時に壁から水が流れ落ち排水溝の様な物に流れていくのを見つけた。
向坂「どこからか聞こえて来た水の音はこれか。」
東郷「みたいだな。んで、これで部屋の中は一周したが・・あとはとうする?」
向坂「もう一度首の無い死体を確認するか。」
そして俺たちは首の無い遺体を調べる事にした。遺体を調べているうちに向坂がある事に気が付いた。
向坂「おい、東郷。この死体の腕の中を良く見てみろ。」
東郷「よく見ろって・・・これは・・・」
遺体を調べていると遺体の胸で組まれた腕の中にすっぽりと赤い石が収まっていた。

東郷「赤い石・・あ、ちょっと本を貸せ。」
向坂「本ってあれか?赤い石についての記述の奴か。」
東郷「そうだ。」
向坂「ほらよ。」
懐から取り出された赤い石についての記述がなされている本を取りだし目を通しながら俺が探し出した古びた羊皮紙にも目を通した。
東郷「わかったぞ。怪異を解く謎が。」
向坂「本当か?」
東郷「ああ、まず赤い石について記述されている本からすると恐らくこの死体が抱えてる赤い石が本の中の石と同じって事だ。」
向坂「なるほど。それで?」
東郷「それでだ、この羊皮紙。掠れて読めないが見つからない様に奪¥○*△と書かれている。」
東郷「つまり、見つからない様に赤い石を奪ってこの洋館から脱出すれば怪異が収まるはずだ。」
向坂「凄い想像力なのは褒めてやるが、何に見つかってはダメなんだ?」
東郷「それは解らん。が、この赤い石を持ち出す方法を考えないといけないのは確かだ。」
向坂「赤い石を持ち出すか。じゃあ安全なところに死体を運び出してそれから石を奪って脱出するのはどうだ?」
東郷「それは不味いだろ。さっき俺らが遭遇した怪異が本物ならこの死体を担いでトンずらしようとした瞬間絶対首が飛んできて平将門状態になるぞ!」
ちなみに、平将門とは桓武平氏五世で関東の豪族。一時期は関東を手中に収め朝廷に反逆した(将門の乱)が討ち取られ京都にて首を晒される。そののち首は体を求めて一人で京都を飛び立ち、関東へと飛んだが途中で力尽き落下。その場所が現在の将門の首塚(東京都千代田区大手町一丁目2番1号外)と言われているがそんな話は今はどうでもいい。
向坂「おい、東郷。さっきから気になってたんだがお前誰に向かって話をしてるんだ?」
東郷「ん?ああ、気にないでくれ。独り言だ。まぁとにかく動かすのは不味い・・・」
言い掛けた時にすでに向坂は遺体の足に手を掛けるとこだった。
東郷「おい、まて!!」
向坂「お前はくどい。とにかく動かすぞ。手伝え。」
俺の制止も聞かずに向坂が足を持ち上げたその時だった。
再び俺たちの間に一陣の風が吹き抜けた。それも今度はさっきの比ではない身が一瞬で凍りつくような風だ。
そして遺体を持ち上げようとした向坂の手もビシッと電気の様な物が走ったと思いきや弾かれる。
向坂「うおっ・・」
東郷「ほら言わんこっちゃない・・で、何が起こったんだ?」
見れば目の前で有り得ない光景が広がっていた。向坂が手を掛けようとした遺体が空中に浮かび上がっているのだ。そして壁の窪みに置かれていた首だけのミイラが飛んできて遺体にくっ付いた。
向坂「これは・・・」
東郷「おいおい・・マジかよ・・・こんなの有り得ねぇだろ・・」
しかし、目の前には空中に浮きこちらを見下ろす遺体だった物が確かに存在する。

注:当初はミイラ画像でしたがリアルSAN値が減るのでしょこたんに差し替え。
東郷「ちっ!!めんどくせえな!!」
グロックを即座に構え発砲。しかし弾は結界の様な謎の壁に阻まれて落下する。
東郷「おいおいおいおい・・銃も効かねえとかマジかよ・・ヤバいぞこれ・・・」
向坂「確かに不味いなこれは・・・」
そう呟きながら向坂はおもむろに割れた皿の破片を取り出し両手で持つと身構えた。
東郷「おい!!皿の破片じゃなくて包丁を取りだせ!!気が動転してるのも解るが戦える武器を出すんだよ!!」
向坂「俺は全然ど、動転なぞしてないぞ。」
東郷「そういうのが動転してるっていうんだがな・・・」
向坂「で、どうするんだ?この状況を打開する方法はあるのか?」
東郷「あるにはあるが・・一か八かの賭けだな。本の通りなら恐らく、あの胸に埋め込まれてる赤い石を奪う事が出来れば倒せるかもしれん。」
見れば確かに空中に制止している化け物の胸には先ほど腕に抱えていた赤い石が埋め込まれている。
東郷「恐らくあの石に一発でも弾丸が命中すれば石が弾け飛ぶとは思うんだが」
向坂「で、あの石に弾丸を命中させる自身はあるんだな?」
東郷「自身は解らんが・・まぁやってみるさ。」
向坂「よし、その賭けに乗ろう。」
向坂「で?俺はなにをすればいいんだ?」
東郷「じゃあお前はその位置で奴を監視してろ。」
向坂「お前は何をするんだ?」
東郷「俺は賭けにでるんだよ!!」
俺の言う「賭け」とはそれ即ち命を賭ける大勝負の事だ。
向坂「あ、おい!!」
向坂の言葉はもう耳に入ってない。俺は化け物に向けて怒鳴り声を上げる。
東郷「こっちにこい!!化け物が!!」
その声に誘われるように空中に制止していた化け物は東郷に肉薄する。そしてその鋭い鉤爪の様な爪で一閃する。
東郷「よし、狙い通り!!」
その一閃を俺は寸でのところで回避する。そのまま受け身を取り照準を合わせる暇もなくグロックの引き金を引き弾丸を放つ。
東郷「当たれええええええええ!!!」
放たれた弾丸はまっすぐ化け物へ向かう。化け物に当たる寸前に光の壁に遮られたが一撃を躱された事で隙が出来てしまったのか弾丸は光の壁を通り抜け絶妙な角度から赤い石へと命中する。弾丸が命中した石は化け物の空だから抜け落ちるように弾き飛ばされそれを向坂が見事に受け止めた。
???「ウグゴガアアアアアアアアアアアアア」
石が体から抜けた化け物は人とは思えぬ叫びをあげて消滅した。
東郷「ふぅ・・・なんとかなったな。」
向坂「まったく・・無茶しやがって」
東郷「無茶は承知でやったんだがな。」
東郷「さてと、まずはここから出ようぜ。気持ち悪くて仕方ねえや。」
向坂「そうだな。」
俺たちは来た道を戻るように進み玄関から無事に外へと脱出した。外は中の空気とは打って変わって清々しく空もいつもとは見違えるほどに晴れやかに見えた。

東郷「さて、これで依頼は達成か?」
向坂「そうだな。後はこの石を商会へと持ち帰りクライアントに石と怪異の原因の説明をすれば完了だ。」
東郷「しっかし、何だかんだ言って今回も上手く行ったな。」
向坂「お前の脳筋っぷりがあってこそだな。」
東郷「今なんか聞き捨てならねえセリフが聞こえたがまぁ今回も許してやるよ。」
東郷「さて、帰るか。」
向坂「そうだな。あ、帰りもお前運転な。」
東郷「はああああ!?俺は活躍したんだからお前運転ぐらいしろよ!!」
向坂「うるさい。早く運転しろ運転手。」
東郷「へいへい。はぁ・・・なんかいつも損な役回りだよなぁ・・・俺」
こんな凸凹コンビが何故存続し続けてるのかは商会最大の謎らしいが、この凸凹コンビはこの洋館調査の約半年後に小笠原諸島に浮かぶ絶海の孤島でさらなる事件に巻き込まれゆく事になる。だが、そんな事件が起こるとは今の二人はまだ知る由も無かった。
author:やま
俺の名前は東郷毅。職業は自衛官だと言っておこう。
ん?お前の自己紹介はどうでもいいだと?まぁそうだろうな。
そんなわけで今俺は相棒の向坂と一緒にとある洋館へやってきている。
東郷「向坂さんよぉ~なんで俺たちがこんなところにいるんだよ。」
向坂「しょうがない。なにせ、クライアントからこの洋館にまつわる怪異について解明しろと言われてるんだから。」
向坂「それよりお前は戦える人間なんだから先頭に立ってすすむべきだろ。」
東郷「へいへい。わっかりましたよ~っと」
言葉を交わしながら洋館の中へ。
そもそも、なぜ俺達がこの洋館の調査へと赴いてるかと言うと
この洋館は取り壊しが決まっていたのだが取り壊そうとすると声がしたり
作業員が体調不良を訴えたりと何かと怪異が起こると言うのだ。

その怪異を解明するのが今回商会に依頼された仕事だ。
ん?商会ってなんだ?だと?そうか。それの説明もまだだったな。商会とは様々な人間が集まる裏組織だ。俺の様な自衛官から相棒である向坂のような素性不明の人間まで色々な人間が集まり、金によってクライアントに雇われる為に所属し、クライアントからの仕事を俺たちに斡旋する組織それが商会って奴だ。まぁ俺の場合は自衛官としての生活とは別に新しい刺激に触れたくて商会に属してるんだがな。
まぁそんな話は横に置いておいて、今俺たちは怪異を解明する為に洋館へと足を踏み入れた。洋館の表玄関を潜ると長い廊下が奥の暗がりへと続いている。

東郷「うわぁ・・以下にもって感じだな。なんかこう・・有り得ない物が出そうってか・・・」
向坂「そんな事はどうでもいい。早く行くぞ。」
東郷「へいへい。」
俺たちはゆっくりと廊下を進む。
向坂「ちょっと待て。」
東郷「ん?なんだ?」
向坂「奥から何か音がする。これは・・・水・・か?」
東郷「水?確かにそう言われればそんな音がしているな。」
奥に何かあるのだろうか?暗がりの奥から微かに水の流れる音がする。俺たちは音のする方へ誘われるように進んだ。
暫く進むと向かって左側に二つの扉があるのに気付いた。
東郷「部屋・・か。怪異の元凶を調べるなら入るべきなんだろうが・・」
東郷「どうも嫌な予感しかしねぇんだよなぁ・・・」
俺はその怪しさ満点の部屋に踏み込むことを躊躇った。いや、本心が踏み込むべきでないと告げているのかもしれない。俺の本心が明らかにこれ以上行くなと告げる中、相棒は・・・と、言うと
向坂「おい、東郷。止まってないで行くぞ。お前先頭で中に入れ。」
と、向かって左側の奥にある扉へと入ろうとしていた。
東郷「っち・・向坂、お前って奴はも少し考えて・・・ってなんで俺先頭なんだよ!!!」
向坂「いや、だって俺戦闘力低いし、てか、現職の自衛官がビクビクしすぎなんだよ。」
東郷「へいへい。わっかりましたよぉ~入れば良いんだろ入れば。」
と、向坂に言われるままに俺が先頭となり部屋へ入った。

入った部屋は窓からの明かりを除いて明かりも無く、もう随分と使われて居ないことが伺えた。
東郷「え~と、ソファーに本棚に机・・か・・・」
東郷「書斎か何かだったのか?」
向坂「まぁ見た感じではそうだろうな。」
入った部屋はソファー、机、本棚があり、書斎あるいはリビングであった事が解る。
東郷「とりあえず調べてみますかね。」
向坂「俺は本棚を調べる。東郷。お前はソファーと机のまわりを調べてくれ。」
東郷「あいよ。」
俺は短く返事をしてソファーを確認する。
東郷「ん~・・埃を被ったままだし、この分だと随分使われてねぇんだろうな。」
ソファーを一通り調べては見たが、特に何も見つからなかった。次は机を調べる事にする。
東郷「机の上は~ってなんもないよな。と・・なるとこういう場合に怪しいのは机の下なんだよな。」
独り言を言いながら机の下をのぞきこむ。
東郷「お、なんだありゃ?」
机の下に古びた紙が見える。俺はその紙を手に取った。
材質から察するに古びた羊皮紙らしい事が解った。

東郷「さて、何が書いてあるのかな?っと」
東郷「え~何々・・・見つからない様に奪¥○*△・・・良くわからねぇなこれじゃ」
羊皮紙には一言「見つからない様に奪¥○*△」と書き記されていた。奪うと書きたかったのだろうか?字が掠れていて読める部分しか解らない。
東郷「さてと・・お~い。そっちはなんか見つかったのか?」
おもむろに本棚を調べていた向坂に声を掛ける。
向坂「なんだ、そっちは調べ終わったのか?」
東郷「もう調べ終わってるよ。そっちは成果あったのか?」
向坂「いや、全然だ。本も本で黒魔術だなんだと胡散臭い物ばかりだな。」
東郷「うへぇ・・やっぱり帰ろうぜ。ここ絶対なんか隠してるって」

向坂「それじゃクライアントの依頼は果たせないだろうが。」
向坂「それより、お前は何か見つかったのか?」
東郷「ん?俺か?俺は机の下を調べたら紙が見つかったぜ。」
そういって向坂へ羊皮紙を手渡す。
向坂「何々、見つからない様に奪¥○*△・・ってなんだこれ」
東郷「知るかんなもん。掠れて読めねえんだよ。」
向坂「まぁいい。これは俺が預かるから次の部屋へ行くぞ。ほら、先に行け。」
東郷「へいへい。また俺が先頭かよ。」
そして俺たち二人は廊下へ戻りもう一つの部屋へと調査に入った。
今度の部屋は流し台とテーブルがある。大分使われていないのは先ほどの部屋と同じだが今度は台所だった所の様だ。

東郷「台所だったとこか。ここは調査する必要もないな。」
向坂「いや、待て。」
東郷「はぁ?なで、待たなくちゃっておい!!」
俺が答える前に向坂は割れた皿が散乱している一角へ歩み寄っていた。
東郷「あの~・・向坂さーん・・何割れた皿と睨めっこしてるんですか~・・・」
そう、向坂は割れた皿を一心に見つめて居るのだ。こいつは変態か?とも思えたが不意に皿を見つめていた向坂が口を開いた。
向坂「割れた皿の破片を持っていくか。」
東郷「はぁ!?おま、んなもん持ってって何になるんだよ!」
向坂「いや、護身用にはなるだろう。」
東郷「護身用って・・もっとマシな物を探せって・・・おっ・・・」
向坂「ん?どうした?」
東郷「あれって包丁じゃないか?」
向坂「そうだな。」
割れた皿の散乱する先に包丁が落ちていた。
東郷「とりあえず、割れた皿と包丁も持っておけ。皿よりは護身用になるだろ。」
向坂「お前にしては気の利く提案だな。」
東郷「お前にしてはってのが気に食わねぇが・・まぁいいや。」
東郷「で、ほかに調べる事はあるか?」
向坂「ここはもうないな。廊下に戻るぞ。」
東郷「あいよ。」
俺たちは台所を後にして再び廊下へと戻ってきた。
東郷「で、次はどうするよ。」
向坂「こうなったら次は決まってるだろ。奥へ進むんだよ。」
東郷「だよな。俺は行きたく無いんだが・・」
向坂「おい。ぶつぶつ言ってないで行くぞ。」
東郷「わぁったよもう!!」
俺たちは最初に水の音がすると言っていた廊下の最奥。暗がりの中へ歩き出した。暫く歩くと廊下の突き当たりへと辿り着いた。
東郷「水の音がするって言っても行き止まりじゃねえか。」
向坂「その様だな。」
東郷「その様だなって・・・」
向坂の淡白な反応に若干困りつつ辺りを見渡すと同じく向かって左側に用具入れの様なものがあるのに気が付いた。
東郷「用具入れ・・・か?これ?」
向坂「その様だな。」
東郷「調べてみるか?」
向坂「一応調べるか。」
そういって向坂が用具入れの様なものを開けようと手を掛けた瞬間不意に一陣の風が吹いた。それもただの風ではない。背筋が凍るような冷たい風だ。

東郷「なんか・・今すごく寒気がしたぞ。」
向坂「なぁ・・東郷?質問があるんだが・・・」
東郷「お、質問とは珍しいな。こういう状況出なければ真面目に答えられるんだが・・・なんだ?」
向坂「これは風が吹いた方向を向くべきなのか?」
東郷「そうだな・・・本来は向くべきじゃないけど玄関があっちだしな。どうする。せーので振り向くか?」
向坂「そうだな。それが良い。」
東郷「じゃあ行くぞ・・!」
東郷・向坂「せーの!!」
二人は振り向いた。
東郷・向坂「!!!?」
二人は言葉が出なかった。なぜならそこには異様な光景が広がっていたからだ。
東郷「お、おい・・てか、あ、あの・・向坂さん?なんかナイフが宙に漂ってらっしゃるんですが・・・」

向坂「そ、そ・・その様だな。というかあれはこちらを確りと狙っているぞ。」
東郷「お、落ち着いてるように見えるが動揺してるの見え見えだぞ。」
向坂「動揺するに決まってるだろ!あんなもんこの世には存在しないっての!!」
向坂「東郷、お前とりあえず撃て。銃持ってんだろ。」
東郷「わぁったよ!!ちっ・・面倒だな・・・っ」
向坂に言われた通り腰のホルスターから護身用に携帯してるグロック17を取り出しざまに構えナイフ目がけ発砲する。
しかし、浮遊している物に命中させるのは難しく、外れる。
向坂「外すなよ!!」
東郷「俺だって人間だ、外さない方がおかしいんだっての!!」
俺が狙いを外した事に口論しているうちにナイフが向坂目がけて飛んできた!
東郷「おい、向坂!!危ないぞ!!」
向坂「そんなのわかってるっての!!」
向坂咄嗟の回避行動。向坂を狙ったナイフは虚しく空をきり、壁に深く突き刺さった。ナイフを構えていた何かが壁からナイフを必死に抜こうとしているのかナイフが激しく揺れる。
向坂「おい、東郷!今なら撃てるだろ。撃て!!」
東郷「言われなくても解ってらい!!」
俺は再び銃を構える発砲。銃弾はナイフの柄に命中しその衝撃で刃が折れた。刃が折れた瞬間ナイフの柄は金属の腐るような腐臭を漂わせ消滅した。
東郷「ふぅ・・何が一体どうなってやがんだ・・」
向坂「そんなの知ったことか。だが、この身に起こった状況を解決する為にもう一度しなきゃならないことがある。」
東郷「そうだな。あの胡散臭い本がぎっしりの本棚で胡散臭い本を調べなおそう。」
俺たちはその場を後にして再び本棚があった書斎かリビングであろうと推測される部屋に移った。
向坂「さて、ここで調べる事は一つだ。」
東郷「ああ、わかってる。本を調べるんだよな。」
向坂「そうだ。わかってるならさっさとやるぞ」
東郷「おうよ。」
俺たちは先ほど胡散臭いと断言していた本をこの異常な事態から逃れる為に真剣に調べた。その結果先ほど見逃していたいくつかの本を発見した。それは頻繁に赤い石と書かれている本と人の生死に関して執拗に追及している本だ。
東郷「生と死と赤い石が頻繁に書かれてる本・・やっぱり胡散臭せぇな。」
向坂「まぁでも、何かの役に立ちそうだな。とりあえず持っていくか。」
そういって向坂は手に入れた本を懐にしまった。
向坂「さて、これで調べてないのはあの触ろうとした瞬間に何か危ないものが襲ってきた用具入れだけだな。」
東郷「そうだな。行くか?」
向坂「行くか?じゃなくて行くしかないだろ。多分謎はあの用具入れが全部知ってるぞ。」
東郷「だよな。」
こうして俺たちは一度後にした用具入れの前に再び立っていた。
向坂「開けるぞ?」
東郷「おう。俺は周りを警戒してるから開けるなら早くしてくれ。」
向坂は用具入れの扉を開けた。そこには掃除用具が入っていたが何か違和感があった。
向坂「普通の用具入れの様だが何か引っ掛かるものがある」
東郷「その引っ掛かる者ってなんだ?」
向坂「解らんが何か・・・あっ!」
東郷「ん?どうした」
向坂「なにか引っ掛かると思ったらこの用具入れ・・用具入れにしては大きすぎないか?」
東郷「そう言われればそうだな・・・奥に何かありそうか?」
向坂「いや、奥には何もないが・・あ、壁があるぞ。」
東郷「壁?用具入れの中にか?」
向坂「そうだ。用具入れの中に土壁があるぞ。」

東郷「壊せそうか?」
向坂「今調べてみる。」
東郷「調べるってどうやってだ?」
向坂「先ほど手に入れた皿の破片を刺し込むんだよ。壊せるところがあれば皿の破片が刺さるはずだ。」
そういうと向坂は皿の破片を壁に差し込み始めた。程なくして向坂が何かを見つけたらしい。俺に声を掛けてきた。」
向坂「あ、あったぞ。ここの奥に中にある。それにここなら人力でも壁が壊せそうだ。」
東郷「あ、でも壊す物とか無いぞ。」
向坂「壊すものが無いなら手足を使えば良いだろ。」
東郷「まぁそうなるよな。んじゃいっちょやりますか。だが、お前さんも手伝ってくれよ。」
向坂「わかっている。」
二人は用具入れの奥の壁を出て掘り、足で蹴り穴をあけそして穴を広げていく。程なくして壁にあけた穴の向こう側から階段が現れた。

東郷「とうとう・・謎の正体が掴めそうか?」
向坂「多分この下に何かがある事は間違いないだろうな。」
東郷「しかも、最初に聞こえた水の音もこの下からか。」
向坂「やっぱり原因はこの下・・だな。」
東郷「行くしかない・・・な・・」
向坂「ちょっと待て、まずは深さを計る。」
向坂は石を階段の下へと投げ込んだ。あまり深くないところからカツーンと言う石がぶつかる音がした。
向坂「これは・・深さにして地下へ一回分くらいという所か。」
東郷「どうすんだ?探しにいくか?」
向坂「行くしかないだろ。」
東郷「だよな。じゃあ行きますかね。」
やはり俺が先頭になり、銃を構え警戒しながら階段を下りていく。階段を下りるとそこには地下室が広がっていた。
東郷「おお、隠してあるのに意味があるのかと思ったが随分と御大層な部屋だな。」
向坂「確かにな・・・ん?部屋の中央に何かあるな。」
東郷「確かにここからじゃ見えないが・・・明かりあるか?」
向坂「ちょうどライターがあるぞ。タバコは吸うからな。」
東郷「そうか。じゃあ灯してくれるか?」
向坂「わかった。」
向坂が持っていたライターで灯りを灯す。ぼうっと部屋が明るくなると共に部屋の中央にある物が浮かび上がった。

東郷「あれは・・祭壇か?」
部屋の中央には石で造られたベッドの様な祭壇の様な何かが鎮座している。その上には・・・
向坂「あれは・・人か?」
鎮座した物の上には人の様なものが横たわっている。
東郷「どうする近づいてみるか?」
向坂「そうだな。近づいてみるか。」
俺たちはヘッドか祭壇か、良くわからない物へと近づいた。近づくと側の壁に窪みがありそこに飾られている物が見えた。
東郷「おい、あれって・・・」
俺が指を指すその先。そこには人の首が置かれていた。
向坂「首・・だな。だが、生首ではない。ミイラかあれは」
そう。壁の窪みに飾られていたものそれは首だった。しかしそれは生首ではなくミイラかしたものだったが、ミイラになってもなお生気を保っているようにも見えた。
東郷「なんか・・ミイラだとしても生々しくないかあれ・・」
向坂「そうか?そうは見えんが・・・」
向坂「それより気になるのは遺体の方だな。」
東郷「遺体がそこまで気になるのか?別に何ともないと思うが・・」
向坂「遺体に近づいて動かれても困るからな。足の裏を撃ってみろ。」
東郷「おいおい・・ご遺体に失礼だとか考えないのかよ・・」
向坂「こんな状況でんなこと言ってられるか。早く撃て」
東郷「わぁったよ。やれば良いんだろ。」
俺は遺体の足の裏へと照準を合わせて一発撃ちこむ。足の裏に弾丸を撃ち込まれた遺体は肉に銃弾が突き刺さる鈍い音と共に少し衝撃で浮き上がったが、特に動きを見せずに沈黙した。
向坂「本当に死んでるんだな。」
東郷「そら、そうでしょうよ。」
向坂「これで周りをじっくり調べられる訳だ。」
東郷「そうだと良いけどな。」
遺体であることを確認すると再び俺を先頭に祭壇へと近づき始めた。祭壇へと近寄るとそこには遺体が横たわっていたが、その遺体にある物が欠けている事に俺は気が付いた。
東郷「おい、こいつ・・首が無いぞ。」
向坂「確かに無いな。となると、あのミイラはこいつの首か。」
東郷「首の無い死体と首だけのミイラか。多分怪異の元凶はこいつで決まりなんだろうな。」
向坂「そうかもしれないが、部屋のほかのところも調べてみるぞ。」
東郷「わかった。」
俺たちは見回すようにしながら祭壇の周りをぐるりと一周した。
祭壇の周りを一周した時に壁から水が流れ落ち排水溝の様な物に流れていくのを見つけた。
向坂「どこからか聞こえて来た水の音はこれか。」
東郷「みたいだな。んで、これで部屋の中は一周したが・・あとはとうする?」
向坂「もう一度首の無い死体を確認するか。」
そして俺たちは首の無い遺体を調べる事にした。遺体を調べているうちに向坂がある事に気が付いた。
向坂「おい、東郷。この死体の腕の中を良く見てみろ。」
東郷「よく見ろって・・・これは・・・」
遺体を調べていると遺体の胸で組まれた腕の中にすっぽりと赤い石が収まっていた。

東郷「赤い石・・あ、ちょっと本を貸せ。」
向坂「本ってあれか?赤い石についての記述の奴か。」
東郷「そうだ。」
向坂「ほらよ。」
懐から取り出された赤い石についての記述がなされている本を取りだし目を通しながら俺が探し出した古びた羊皮紙にも目を通した。
東郷「わかったぞ。怪異を解く謎が。」
向坂「本当か?」
東郷「ああ、まず赤い石について記述されている本からすると恐らくこの死体が抱えてる赤い石が本の中の石と同じって事だ。」
向坂「なるほど。それで?」
東郷「それでだ、この羊皮紙。掠れて読めないが見つからない様に奪¥○*△と書かれている。」
東郷「つまり、見つからない様に赤い石を奪ってこの洋館から脱出すれば怪異が収まるはずだ。」
向坂「凄い想像力なのは褒めてやるが、何に見つかってはダメなんだ?」
東郷「それは解らん。が、この赤い石を持ち出す方法を考えないといけないのは確かだ。」
向坂「赤い石を持ち出すか。じゃあ安全なところに死体を運び出してそれから石を奪って脱出するのはどうだ?」
東郷「それは不味いだろ。さっき俺らが遭遇した怪異が本物ならこの死体を担いでトンずらしようとした瞬間絶対首が飛んできて平将門状態になるぞ!」
ちなみに、平将門とは桓武平氏五世で関東の豪族。一時期は関東を手中に収め朝廷に反逆した(将門の乱)が討ち取られ京都にて首を晒される。そののち首は体を求めて一人で京都を飛び立ち、関東へと飛んだが途中で力尽き落下。その場所が現在の将門の首塚(東京都千代田区大手町一丁目2番1号外)と言われているがそんな話は今はどうでもいい。
向坂「おい、東郷。さっきから気になってたんだがお前誰に向かって話をしてるんだ?」
東郷「ん?ああ、気にないでくれ。独り言だ。まぁとにかく動かすのは不味い・・・」
言い掛けた時にすでに向坂は遺体の足に手を掛けるとこだった。
東郷「おい、まて!!」
向坂「お前はくどい。とにかく動かすぞ。手伝え。」
俺の制止も聞かずに向坂が足を持ち上げたその時だった。
再び俺たちの間に一陣の風が吹き抜けた。それも今度はさっきの比ではない身が一瞬で凍りつくような風だ。
そして遺体を持ち上げようとした向坂の手もビシッと電気の様な物が走ったと思いきや弾かれる。
向坂「うおっ・・」
東郷「ほら言わんこっちゃない・・で、何が起こったんだ?」
見れば目の前で有り得ない光景が広がっていた。向坂が手を掛けようとした遺体が空中に浮かび上がっているのだ。そして壁の窪みに置かれていた首だけのミイラが飛んできて遺体にくっ付いた。
向坂「これは・・・」
東郷「おいおい・・マジかよ・・・こんなの有り得ねぇだろ・・」
しかし、目の前には空中に浮きこちらを見下ろす遺体だった物が確かに存在する。

注:当初はミイラ画像でしたがリアルSAN値が減るのでしょこたんに差し替え。
東郷「ちっ!!めんどくせえな!!」
グロックを即座に構え発砲。しかし弾は結界の様な謎の壁に阻まれて落下する。
東郷「おいおいおいおい・・銃も効かねえとかマジかよ・・ヤバいぞこれ・・・」
向坂「確かに不味いなこれは・・・」
そう呟きながら向坂はおもむろに割れた皿の破片を取り出し両手で持つと身構えた。
東郷「おい!!皿の破片じゃなくて包丁を取りだせ!!気が動転してるのも解るが戦える武器を出すんだよ!!」
向坂「俺は全然ど、動転なぞしてないぞ。」
東郷「そういうのが動転してるっていうんだがな・・・」
向坂「で、どうするんだ?この状況を打開する方法はあるのか?」
東郷「あるにはあるが・・一か八かの賭けだな。本の通りなら恐らく、あの胸に埋め込まれてる赤い石を奪う事が出来れば倒せるかもしれん。」
見れば確かに空中に制止している化け物の胸には先ほど腕に抱えていた赤い石が埋め込まれている。
東郷「恐らくあの石に一発でも弾丸が命中すれば石が弾け飛ぶとは思うんだが」
向坂「で、あの石に弾丸を命中させる自身はあるんだな?」
東郷「自身は解らんが・・まぁやってみるさ。」
向坂「よし、その賭けに乗ろう。」
向坂「で?俺はなにをすればいいんだ?」
東郷「じゃあお前はその位置で奴を監視してろ。」
向坂「お前は何をするんだ?」
東郷「俺は賭けにでるんだよ!!」
俺の言う「賭け」とはそれ即ち命を賭ける大勝負の事だ。
向坂「あ、おい!!」
向坂の言葉はもう耳に入ってない。俺は化け物に向けて怒鳴り声を上げる。
東郷「こっちにこい!!化け物が!!」
その声に誘われるように空中に制止していた化け物は東郷に肉薄する。そしてその鋭い鉤爪の様な爪で一閃する。
東郷「よし、狙い通り!!」
その一閃を俺は寸でのところで回避する。そのまま受け身を取り照準を合わせる暇もなくグロックの引き金を引き弾丸を放つ。
東郷「当たれええええええええ!!!」
放たれた弾丸はまっすぐ化け物へ向かう。化け物に当たる寸前に光の壁に遮られたが一撃を躱された事で隙が出来てしまったのか弾丸は光の壁を通り抜け絶妙な角度から赤い石へと命中する。弾丸が命中した石は化け物の空だから抜け落ちるように弾き飛ばされそれを向坂が見事に受け止めた。
???「ウグゴガアアアアアアアアアアアアア」
石が体から抜けた化け物は人とは思えぬ叫びをあげて消滅した。
東郷「ふぅ・・・なんとかなったな。」
向坂「まったく・・無茶しやがって」
東郷「無茶は承知でやったんだがな。」
東郷「さてと、まずはここから出ようぜ。気持ち悪くて仕方ねえや。」
向坂「そうだな。」
俺たちは来た道を戻るように進み玄関から無事に外へと脱出した。外は中の空気とは打って変わって清々しく空もいつもとは見違えるほどに晴れやかに見えた。

東郷「さて、これで依頼は達成か?」
向坂「そうだな。後はこの石を商会へと持ち帰りクライアントに石と怪異の原因の説明をすれば完了だ。」
東郷「しっかし、何だかんだ言って今回も上手く行ったな。」
向坂「お前の脳筋っぷりがあってこそだな。」
東郷「今なんか聞き捨てならねえセリフが聞こえたがまぁ今回も許してやるよ。」
東郷「さて、帰るか。」
向坂「そうだな。あ、帰りもお前運転な。」
東郷「はああああ!?俺は活躍したんだからお前運転ぐらいしろよ!!」
向坂「うるさい。早く運転しろ運転手。」
東郷「へいへい。はぁ・・・なんかいつも損な役回りだよなぁ・・・俺」
こんな凸凹コンビが何故存続し続けてるのかは商会最大の謎らしいが、この凸凹コンビはこの洋館調査の約半年後に小笠原諸島に浮かぶ絶海の孤島でさらなる事件に巻き込まれゆく事になる。だが、そんな事件が起こるとは今の二人はまだ知る由も無かった。
(完)