Naotenハザード

医師「局所麻酔の上、切開します。」
ほ、他の方法はないのか!?
何故こんな事に…。
さかのぼる事、4日前…。
Naotenの体にはとある異変が起きていた。
ふともものつけねの少し下、
つまりお尻の少し下辺りに、
蚊に刺されたようなアトが出来た。
痛くも痒くも無い。
蚊にさされたんだろう。
深くは考えていなかった。
3日前。
朝起きると、太ももの後ろのソレは、
一回り大きくなっていた。
歩くと違和感がある。
太ももの付け根、という事で、
伸び縮みする部位な為歩くだけで刺激され、
そして座り仕事ゆえ、必ず椅子にぶつかる部分ゆえ、
違和感は、確かな痛みへと代わって言った。
2日前。
朝起きると、激痛が走り抜けた。
間違いなく、腫れている。
FFをやっていても、体勢的にチャットを打つことすら出来なくなり、
ソフトウェアキーボードを駆使して急場を凌いでいた。
体もなんだか熱っぽい。
寝よう…。
1日前。
朝起きると、全身汗だくだった。
まったく暑くは無かったのにだ。
腫れもさらに悪化している。
膿か何かが溜まっている可能性がある。
場所的に見えない場所だったが、
意を決して熱消毒をした針を患部に刺した。
激痛が走るが、歯を食いしばって、
思いっきりさす。
だが血が少し出る程度で、膿など出ない。
眠い、意識が朦朧としてきた。
同僚がおいしそうに見えてきた…かゆ…うま…。
本日。
もはや限界だった。
片足を怪我した人のように、
引きずりながら歩いていた。
病院に行き、診療室に入ると、
医師は顔をしかめた。
「これはかなり重症ですよ?」
「こんなでは体も熱を持ってるんじゃないですか?」
馬鹿な。暑いのはここ数日の陽気のせいさ。
熱なんかコレッポッチも…。
「38度…。やっぱり。」
なんだって!?
この暑さは、暑かったんじゃなくて、
熱かったと言うのか!?
口で言っても変わらんな…、
俺は自嘲しながらそう思った。
「注射器持ってきて。うん、針はいちばん太い奴。」
ズボンを下ろしてうつ伏せになると、
その殺人兵器は、俺の太ももへ容赦なく襲い掛かった。
ぎ、ギェェェ!!!!?
尻ならともかく、
太ももの裏に物理防御力は余り無い…。
もがき苦しむ俺をよそに医師は注射器を俺に見せた。
「ほら、見てください。血ばっかりで、膿は僅かしか取れません。」
「これは、腫れが出来てから放置が長かったために、
膿が固まり始めているからです。
注射器の針では細すぎるのです。」
万事休す。
解決方法は無いのか!!?
動揺の目を医師に向けると、医師はこう切り出した。
医師「局所麻酔の上、切開します。」
つまりそう言う事だった。
医師「切開した後に、膿を掻き出し…」
既に医師の声は届いていなかった。
軽い気持ちでサンダルで病院を訪れたNaotenには、
大きすぎる事態であった。
俺は処置室と書かれた部屋に移され、
ベッドにうつ伏せになっていた。
先ほどの医師と、
脇を固めるように2名の看護士(女性)が陣形を組む。
看護士「トランクスを脱いでください。」
看護士がトランクスをずり下ろす。
看護士「腰を上げてください。」
引っ掛かりを失った唯一の人類の証は、
俺の体を離れていった。
医師「麻酔注射行きます。
かなりイタイです。」
ブスッ!!
!!!!!??!??!?
声にならない声が口の中にこだまする。
1分後、痛みは自然と和らいで行った。
麻酔が効いてきたのか??
ギーコギーコギーコ。
人体から出るはずの無い音が聞こえてきた。
何かを切断している??
なんだ?その位置にあるのは俺の太ももだけだぞ?
既に意識は混濁していたNaotenには、
状況を分析するだけの力は残っていなかった。
そう、これは夢なんだ。
さあ、夢ならさめ…。
医師「ほら、みてくださいコレ!!」
目の前に差し出されたのは血と膿だらけの不繊布。
ぎゃ、ぎゃああああああああああああ!!!?
そのとたん、精彩を取り戻した我が肉体は、
急激な痛みを感じ始めた。
い、いた!!
いたひ!!
じったんばったんするNaoten。
そこをすかさず看護士が取り押さえる。
や、やめて!いたい!死ぬ!!
血!膿!!ギーコギーコォォ!!!
フルチンで暴れる男の姿は、余りにも滑稽に見えたことだろう。
医師「ふぅ…とりあえず処置は終わりました。
あと数日、通院してください。」
ハァハァゼェゼェ(涙目
医師「まぁ、切開じゃなくても抗生物質で膿を除去できるんですが、
こっちの方が確実ですので。」
え!?
いまのは幻聴か?
いや、いい、全ては終わったんだ…。
こうして、ナオーンシティーにおける、
バイオ・ハザードは、無事、鎮圧されたのであった。